去る5月31日、火星が約11年ぶりに大接近しました。この頃帰宅時に「なんか随分デカく見える星があるな。色的に火星かな？」と思っていましたが、やっぱりそうでした。火星の公転周期は地球の約2倍、つまり火星が一周する間に地球が二周するわけですから、ならば一年おきに大接近しそうなものですが、実際にはそうではありません。惑星の公転軌道は楕円で、地火両星の軌道の距離も場所によって差がありますので、実際には約2年2ヶ月毎に接近します。その2年2ヶ月毎の接近の中でも特に大接近なのが今回です。

　火星は地球にとって一番近い外惑星ですので、人類史上においてもかなり古くから世界中で多くの観測記録の残っている星です。単純に距離だけを比較すれば金星の方が近いですが、いかんせん金星は内惑星であるため、観測可能な時間が非常に短いという欠点があります。その点火星は外惑星ですから、周年中、夜間中観測できるということも多くの観測記録が残されることとなった理由の一つでしょう。 　その古くから観測記録の残る火星ですが、洋の東西を問わず似たような伝説が残っているのは面白いですね。曰く、「火星が近づくと戦乱が起こる」、と。火星の色を見ると血を連想する、というのが人類共通の現象のようです。「なんと因果な習性か！」と思わずにはいられません。そして、実際に戦乱が起こったからこそそのように伝えられたのでしょう。前述のとおり火星の接近頻度は2年2ヶ月毎、その中でも大接近は15～18年毎、そのたびに戦乱を連想するのは、人類の歴史が絶え間ない戦乱の歴史であることの証明でしょう。改めてホモ・サピエンスという生物が因果な生き物である、ということを実感せずにはいられません。