日本語は難しい…?~言語カバー率の話~

インターネットを利用していて、日本語を勉強する外国人の方によく言われるのが「日本語は覚える言葉が多すぎてめんどくさい」ということです。確かにひらがな、カタカナ、漢字という三種類の言葉を使い分けているのは外国でも珍しいように思えます。しかし、この「覚える言葉」というのは、それらの区分を表すだけではありません。

 「言語カバー率」というものをご存知ですか?これは、特定の言語で使用頻度の高い語をランク付けし、トップ○○位(○○には100とか3000とかの数字が入ります)までの語が日常会話の何%を占めているかを表したものです。覚える単語の数が少なければ少ないほど、その言語の習得は容易になりますし、幼い子どもでも普通に会話することがしやすくなります。このカバー率、対象とする語数で変化するのですが、上位1000語で見てみると、フランス語が83.5%、英語が80.5%、中国語が73.0%となっています。  では日本のカバー率はどれくらいなのかというと、なんと60.5%なんです。他の言語と比較すると明らかに低いことがわかります。ちなみに日本語が中国語のカバー率に到達するには上位3000語が、英語のカバー率までは5000語が必要なのです。そりゃ「日本語はめんどくさい」にもなるわ。  この結果、日本語が一見非効率的に見えるのですが、実は日本語独自の「言葉の繊細さ」を示すバロメーターとして見ると、別の考え方が見えてきます。カバー率が低いと、使用する言葉は増えていきます。すると場面や状況に応じて使用する語を選択しなくてはいけません。実は、カバー率の低さこそが言葉を選択し、使用するという行為を生み出すのです。31文字の和歌、15文字の俳句や川柳には、その言葉を選んだ詠み手の感性が明確に表れているのではないでしょうか。言葉と言葉の微妙なニュアンスの違いに、私たち日本人は感動しているのかもしれません。