南海トラフ大地震の真実!?~行政と地震~

 先週熊本で大地震がありました。被災された皆さんには謹んでお見舞い申し上げます。

 しかしながら今回の地震、行政側に地震を「なめてた」感があることは否めません。公共施設・医療機関建築物に耐震強度がないことがわかっていながら、財政難を理由に対策を放置した。結果、避難・救援の拠点となるべきこれらの機関建物自体が被災して使い物にならない。「どうせ九州じゃ大地震なんておきやしない」という甘い考えが根底にあったのは間違いないでしょう。日本の場合、歴史上震度6強以上の地震を経験していない地域はほとんどありません。北海道のごく一部地域になくはないですが、これは単にアイヌ時代の記録がないだけ、と見た方が自然でしょう。故に地震対策は最優先で常に最悪の事態を想定すべきであるのにしてこなかった。わずか5年前にあの大災害があったにも関わらず。あまりにもお粗末であると言わざるを得ません。

 対して我らが地元静岡。ネット上でのネタに「対地震最強要塞都市・静岡」というものがありますが、まんざら冗談でもないですね。東海地震が来るぞ来るぞと脅され続け、子供の頃から数々の避難訓練を行い、建物の耐震化率はNo.1。静岡県が世界一地震対策ができている件であることは間違いないでしょう。市町村レベルだとどこになりますかね?
 ではなぜ静岡はこんなにも「東海地震が来るぞ」と脅され続けてきたのか?それは1970年代に東海地震が起こる時期が切迫している、という研究が発表されたことに始まります。曰く、東海地震は概ね100~150年周期で起こっている(明応1498、慶長1605、宝永1707)が1854年の安政東海地震を最後に100年以上地震がない、これはいつ起きてもおかしくない状況だ、というものでした。日本の大動脈・静岡が地震で壊滅したら日本経済が破滅的打撃を受ける。だからこそ優先的に対策を、というわけで防災予算は静岡に圧倒的に多額が注ぎ込まれます。それ自体は間違ってはいないでしょう。いずれ起きるのは確実なのですから。しかしながら、すでに東海地震が来るぞ、と言われ始めてから40年になります。その間、他地域では阪神淡路や東日本はじめ多くの大損害を出した地震がありました。「東海地震は明日起きてもおかしくない、でも明日起きたら奇跡だ。」なんて揶揄されるようになっている始末です。なぜ、こんなことになっているのでしょうか?あまり知られていないことですが、実は最初に東海地震発生を警告した研究者2000年ごろに自説を撤回しています。当時と現在とでは研究体制が違いますから、それは仕方のないことでしょう。
私は専門的な地震研究者ではありませんし、観測もしていません。しかし、過去の地震記録文献や地震学関連の書籍・論文等を読んだ上で、多分こういうことなんじゃないかな?という私なりの結論を出しました。ここから先はあくまで私個人の中でのまとめですので、学術的におかしい所があったとしてもその辺は割り引いて下さい。
東海地震はそれ単独で起こることはありません。必ず東南海・南海地震と連動して発生します(いわゆる南海トラフ地震)。東南海・南海地震は昭和に発生(1944,1946)していますが、この時に東海地震が発生していないため、「前回(安政1854)からもう100年以上も東海地震がない。これは来るぞ!」となったわけです。でも、もし昭和東海地震が存在したのだとしたら・・・・・・?
 カギになるのは1944年12月7日に発生した昭和東南海地震です。この地震、文献を調べると色々とおかしなことが目につきます。具体的に挙げると、

①震源は遠州灘沿岸である。
②最も揺れが酷い地域は御前崎-浜松間。甲府や諏訪でも震度6(当時は強弱の区別はなし)を記録している。
③最も被害が集中したのは静岡県・愛知県

・・・・・・これって東海地震じゃないの?という疑問が発生します。南海トラフ地震の区分は震源が駿河湾・遠州灘なら東海、三重県・和歌山県沖なら東南海、四国沖なら南海という風に区別するのが通常です。なんでこんなおかしなことになっているのか?それには当時の日本の情勢が関係しています。1944年12月7日という日がポイントです。戦時中、それも相当戦局が悪化していた時期です。地震発生直後に静岡新聞は「浜松地震発生」という号外を発表しています。ところが、その後に陸軍が情報統制を開始。日本の大工業地域である東海地方が地震で壊滅した、ということがアメリカに知られるのはマズい、という極めて愚かな理論で地震被害の隠ぺいを図ります。そのため、この地震は近い時代の地震の中では珍しいぐらいに被害状況がよくわからない。また士気を下げるという理由(翌日が開戦記念日ということもあった)で、地震があったことすら他地域にはほとんど知られず、救援活動も満足に行われなかったそうです。名称も「東南海地震」と変えられ現在に至っています。
 以上を踏まえた上で、私なりにこう結論を出しました。「東海地震は1944年に発生している。南海トラフ地震の周期100~150年を考えれば、次に発生するのは2045~2095年頃だろう。」あくまで素人予測ですので外れたらあしからず、としか言えませんが。ただ東海地震を伴う南海トラフ地震は発生前に東海西部~近畿東部の内陸部で直下型地震が増える傾向がある(天正地震、慶長伏見地震、伊賀地震、濃尾地震など)と言われています。それが起こってから(直下型地震の現地の人には悪いですが)対策をしても遅くはないと思います。

 日本は間違いなく世界一の地震国です。その対策として過去の地震の被害状況の分析は欠かせないでしょう。そういう意味で1944年の地震で陸軍がとった行為は、どうだったんだろう?と思います。なお、陸軍が必死で隠そうとしたこの地震、翌日にはアメリカ各紙で大々的に報じられ、ルーズベルト大統領は日本国民に対しお悔み声明を発表しています。
 いつの時代も、情報が大事ですよね